artim

川島良彰 meets artim
「美味しいコーヒーの選び方」

2016年11月26日(土)

「暮らしを楽しむ達人」をゲストに迎えてスペシャルなイベントを開催している『サロン青山』。今回は「コーヒーハンター」として知られるミカフェート代表の川島良彰氏によるトークショー&ワークショップのレポートをお届けします。世界中のコーヒー農園を飛び回り、栽培指導から輸入販売までを一貫して手がける川島氏。品質への徹底的なこだわりから生まれる極上のコーヒーは、氏が長年にわたり築き上げてきたコーヒービジネスにおける理念の結晶です。ワークショップでは良質な豆の選び方や、家庭で美味しいコーヒーを味わうコツを直伝。お客さまにも実際にコーヒーを淹れる体験をしていただき、素敵な香りに包まれた午後のひとときとなりました。

イベント前半は、川島氏がartimのコンセプトをもとに特別にブレンドしたコーヒー「アーティム ブレンド」をお客さまに味わっていただきながらのトークショー。

「この<アーティム ブレンド>は、グアテマラのサン ミゲル農園のブルボン種が80%、パナマのコトワ農園のカトゥーラ種が20%という配合になっています。僕は商社などを通さず、直接農園に行ってコーヒーを買い付けているわけですが、どちらも素晴らしい農園です。敷地内に学校を建てて労働者や近隣の村の子どもを教育したり、労働者を手あつく保護しながら経営しているんですね。また、コーヒーは日陰で育ちますから、大きな木と一緒に植えたり、もともとある森林を伐採せずに植えることができる、環境に優しい農作物です。美味しいコーヒーは美味しい環境じゃないと育たないと僕は思っているのですが、ここでは人権と環境を守りながら<サステイナブルなコーヒー作り>が行なわれています」

収穫のタイミングと豆の熟度
精選や輸送の方法が味を左右する

コーヒー栽培においては、収穫のタイミングと豆の熟度が、味に決定的な影響をもたらすといいます。

「コーヒーの花は、たった3日で散ってしまいます。開花がピークを迎えると農園全体が真っ白になるのですが、このときに出来た実がいちばん美味しい。お茶などは初摘みが良いとされますが、コーヒーの場合は最初と最後の収穫でとれたものは美味しくありません。あくまでピークのときの収穫が大切なんですね。それと重要なのが熟度。完全に熟した実はコーヒー・チェリーと呼ばれ、鮮やかな赤色をしていて、指で押すとポタポタとジュースが滴ってきます。ここまで完熟した実だけを選んで収穫すると、エグ味や雑味のない美味しいコーヒーになるんです。コーヒーもフルーツですから、完熟豆ならではの甘みと酸味を楽しむことができるんですよ」

収穫されたコーヒーは、果肉の除去、水洗い、乾燥、脱穀といったプロセスを経て、厳選された豆だけがミカフェートのコーヒーとして日本に輸出されます。

「精選方法ひとつをとってもさまざまで、果肉を取ってから乾燥させる方法(水洗式)、果肉がついたまま乾燥させる方法(非水洗式)、その中間といえるパルプドナチュラルという方法などがあり、産地では日々新たな試みが行なわれています。それぞれの方法で味は変わりますから、皆さんもぜひ、コーヒーを買うときはお店の方に精選方法を尋ねてみてください。ちゃんと答えてくれるお店なら、良いコーヒーが手に入ると思います。また、輸送方法にしても、日本に入ってくるコーヒーのほぼ99%が温度管理のできないドライコンテナで運ばれてきますが、これはコーヒーの品質に大きなダメージを与えるんですね。そこでミカフェートでは温度管理のできるリーファーコンテナか空輸を使っています」

ガスと一緒に香りを封じ込める
ボトルに入れられたコーヒーへのこだわり

ミカフェートといえば、シャンパンボトルに入れて販売されているコーヒーが有名です。スタイリッシュなだけでなく、ここにも川島氏の品質に対するこだわりがありました。

「焙煎したコーヒーをどうやってお客さまに最高の状態でお届けするか、これは僕にとって非常に大きなハードルでした。皆さんは、スーパーなどで売られているコーヒーの袋に小さな穴が開いているのをご覧になったことがありませんか? 焙煎したコーヒーからは炭酸ガスが発生するのですが、あれはガスを外に逃すために開いている穴なんです。けれど、ガスを抜くと一緒に香りも逃げていってしまいますよね。そこで僕は、ガスをより多く豆に残すしかないと考えました。最初はお茶のペットボトルに入れてみましたが、次の日にはガスでパンパンに膨らんでダメ。次にコカ・コーラの空きビンに入れてみたらうまくいったので、最高級品はシャンパンボトルに入れることに。三菱樹脂との共同開発で、コーヒー専用のペットボトルも開発しました」

お湯を注ぐときは中心から
ドームのように粉が膨らむのが鮮度の証

イベント後半はワークショップ。お客さまにコーヒー豆の選別(ソーティング)と抽出を体験していただきました。

「皆さんは、コーヒー豆の量をメジャーカップで測っていますか? コーヒーは同じかさ(体積)でも豆の密度によって重さが違いますから、きちんと重さを測ることをおすすめします。抽出の際は、挽いた粉をフィルターに入れてドリッパーにセットし、まずは粉の中心から円を描くようにお湯を注ぎます。全体が湿る程度に注いだら、30秒蒸らす。そして、ふたたび中心からお湯を注いでいきます。このとき、ドームのように粉が膨らむのが鮮度の証。このドームの高さを一定に保ちながら、フィルターと接している縁の粉にはお湯をかけないように注いでいきます。どうですか、上手に抽出できましたでしょうか? コーヒーの美味しさというのは、80%が豆の品質、20%が焙煎と抽出で決まると言われています。皆さんもまずは質の良い豆を選ぶ目利きになって、ご家庭で美味しいコーヒーを楽しんでください」

川島良彰

川島良彰Yoshiaki Kawashima

1956年静岡生まれ。1975年中米エル・サルバドル国立コーヒー研究所に留学し、コーヒー栽培・精選を学ぶ。その後大手コーヒー会社に就職。ジャマイカ、ハワイ、インドネシアで農園開発を手掛け、マダガスカルで絶滅危惧種の発見と保全、レユニオン島では絶滅した品種を探し出し、同島のコーヒー産業復活を果たす。2008年独立し㈱ミカフェートを設立し、新しいコーヒー文化を提案。
日本サステイナブルコーヒー協会理事長、JAL日本航空コーヒー・ディレクター、タイ王室メイファールアン財団コーヒーアドバイザー、カリフォルニア大学デイビス校コーヒーセンター アドバイザリー・ボードメンバー等を務める。